セエヌ川
ほんにセエヌ川よ、いつ見ても
灰がかりたる浅みどり……
陰影に隠れたうすものか、
泣いた夜明の黒髪か。
いいえ、セエヌ川は泣きませぬ。
橋から覗くわたしこそ
旅にやつれたわたしこそ……
あれ、じつと、紅玉の涙のにじむこと……
船にも岸にも灯がともる。
セエヌ川よ、
やつばりそなたも泣いてゐる、
女ごころのセエヌ川……